読んだ本の記録でもするか。続くかは不明。
成瀬は天下を取りにいく/宮島未奈
滋賀県が舞台の青春小説。書店で長いこと推されていて、表紙がいいのとサイン本があったので買っちゃった。
中身はまさしく青春小説と呼ぶにふさわしいもので、主人公の成瀬というおもしれー女が周りにいろいろ影響を与えつつ突き進んでいくみたいな話。成瀬のキャラが立ってたし、面白いだけでなくちゃんといろいろ考えて悩んでるという描写があったのも良かった。
中盤に成瀬全然関係ない話が始まるのと、その時の時系列が分かりにくいのはちょっとなーと思った。終盤の展開に重みを持たせるためなんだろうけどそれにしてはエピソードの後味が薄かったし、それやるくらいならもっと色々な視点から成瀬を見た話が欲しかった。親とか先生とか。
なんか構成とかいろいろ考えちゃってこういう作品が素直に響かなくなってるな。
十角館の殺人/綾辻行人
国内推理小説の代表作みたいな扱いなのでいつか読まなきゃな~と思っていた本。近く実写化するらしく、推されていたので買ってみた。
孤島の別荘?に集まった大学生7人が1人ずつ殺されていき……という定番の設定。犯人が誰なのかという結末も面白かったが、その明かし方がお洒落で良いなーと思った。実写化にあたっては「あの一行の衝撃!」みたいなことが言われていたが、確かに一行で得られる衝撃としては極上だった。
一方で、犯人がやっていた下準備とか犯行のことを考えると何か引いてしまうというか、「そこまでやります?」みたいな気持ちになってしまう部分もあったな。そりゃ理論的にはできるだろうけど実際そこまでやんのか?という思いが頭をもたげてしまうというか。
まあ殺人って死体というでかい証拠も残るし、アリバイも固めないといけないので準備も片付けも必要なんだろうけど、その過程を改めて見せられるとなんか醒めてしまう部分もあるのだった。蛙化現象ってこれのことかな。
自分が日常の謎を扱った推理小説が好きなのはこの辺が理由かもしれない。日常の謎では登場人物が何気なく、あるいはとっさにとった行動が積み重なって不可解な事象が起きるというパターンが結構あるので、入念な準備とかの描写があんまりない。情報を整理して推理を組み立てていくという、推理小説の美味しい部分だけを楽しめるのだ。「伯林あげぱんの謎」なんかはまさにそういった短編だったことを思い出す。
でもやっぱりこれって無責任な楽しみ方なんだろうか。推理小説が好きなら、人を殺すための泥臭い準備の過程とかにしっかり向き合っていくべきなのだろうか。
地雷グリコ/青崎有吾
最近の推し作家である青崎有吾の新作。女子高生主人公がいろんなゲームで対決する、言ってしまえばライアーゲーム系の作品。推理小説!って感じではないですね。
まず設定がすばらしくて、文化祭で屋上を使える一つだけの権利を賭けて、立候補した団体がゲームのトーナメントで争っている。このトーナメントの名前が、「バカと煙は高いところが好き」なので「愚煙試合」。最高だ。主人公の射守矢がこの愚煙試合を2連覇中の椚先輩に挑む……というところからストーリーは始まっていく。
趣向を凝らしたゲームで様々な駆け引きを楽しめる一方で、ライアーゲーム系作品の常としてゲームの難易度と敵の強さがどんどんインフレしていくので、終盤は「ホンマにそんなことできるか?」という気持ちが強くなっていくのを感じた。登場したゲームの中では「自由律ジャンケン」が一番好きだったかな。